2009年7月14日火曜日

silkのstole ・辻が花

久保田一竹氏が84歳で亡くなられてからもう何年経つだろうか。
64歳で「デビュー」して20 年疾走して去って行ってしまった。
えっ、60過ぎのデビューって・・・・。
わたしが染色の世界に全く必然性もなく出会って(ただ本人が自覚していなかっただけで実はそれなりのいわくはあったことが後に判明するのですが)
この秋で30年、うち10年のお弟子生活の間、一竹さんはばりばりブイブイの全盛期だったのでこちらにもかなりの影響が押し寄せて来てました。
出る杭は打たれるで、かなりあれこれ言われた方だったが、私のように
外の世界から来たものには、はっきり言って「面白かった!!」。
小劇場の舞台とは言え、頭でっかちの「アート」みたいなことの端くれに
居場所があった者にとって彼の所業は刺激的だった。
着るものじゃない、ケレンだ、とか工芸的にはいかがなものかとか様々な雑音が聞こえて来たし、わたしとしても(誠に不遜で失礼な物言いですが)食傷気味で離れていたこともあるのだが、改めてその死の間際までの進化、どん欲さを見るにつけ、凡百の作り手、評論家をはじき飛ばす威力がやはりあったのだなぁと思う。果たして自分はそんな「おもろー」な世界に行けるだろうか、と。
宇野千代さんは生前(確か99頃か)「わたしね死なないような気がする」なんてのたまっていたが、不死身の一竹もライフワークは未完のまま逝ったことからしても、いくら「宿題」があってもお迎えは来てしまうのだなぁ。

さて今週、その一竹さんとの出会いが、生涯大事件をふたつ挙げるとして
その一つだったと言う方が見える。刺激されて自分も趣味で始めてとっくに
その域を脱してしまっている方。

さてさて。
わたしも私淑させてもらった一竹氏にトリビュートできるものを作っていかねば。時代の雰囲気もあって今、着物も帯も「あの」バブルのころのような
バブリーでケレンたっぷりなものはとんと見かけなくなってしまっている。
またいつかその手のものも復活するやもしれないが、それまでは
ストールを主戦場にデビューに向けて精進しようかなんて・・・・。
写真のストールは、もちろん一竹さんのような長時間の大作ではないが
それでも限られた定型枠で奮闘したつもりではあります。

いつの間にか時代の閉塞沈滞憂鬱アンニュイな黴菌に犯されて
「おもろー」からはぐれてしまったようだ。
わたしも新宿に戻ったことを適当な言いがかりにして、自分で面白いと言えるものを作っていきたい。
皆様の暖かくも厳しいご支援をお願い申し上げたく。

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