2009年12月8日火曜日

ブルーレイディスク


山のアトリエに行く途中、相模原から八王子に抜ける道から富士山の頭をちょっとだけ見ることができます。
暖かい季節のうちは大気が淀んでいて見られないのが、寒さと共に水蒸気が少なくなって御大将の威容が拝めます。
きっと1000年前も10000年前もそして68年前にもこんな感じで日本人は見ていたでしょう。68年前の12月8日、日本はアメリカ、イギリス相手に戦いを開始したわけです。大半の日本人は熱狂してはいても不安でたまらない思いで、中には富士に祈った人もいたでしょう。
そのあたりの「動物的な」行動の怖さはちょうど一年前のブログ「群れるということ」に書きましたので、理屈っぽいなぁなんて思わずに是非覗いてみてください。わたくしがもっとも書きたかったことのひとつですから。


恐らくはもう再びアメリカ相手に戦うなんてことはありえないでしょうから、あのような恐ろしい時代の有様が歴史物語としてしか捉えられなくなっていって、何の「教訓」も伝わらなくなっても致し方ないかもしれません。

今では評判ガタ落ちの「小泉」元首相がたびたび涙した特攻隊のエピソード。実のところ多くの当事者の認識は、「犬死に」としての自分たちの死の意味を後世の日本人に知らしめて、まっとうな「国」としての再生の捨て石となるというような粛然とせざせるを得ないような冷静さでありました。

今年、NHKの番組はじめ、死期が近くまで来ているあの時代の人達の証言が次々と明るみに出て来ました。
海軍軍令部という、戦争遂行の決定権を持つポジションにいたエリート達の
余りの幼い精神性には、恐怖感すら覚えました。

戦争は、戦争を知らない人間によって起こされると言います。
明治以降、日本は戦争ばかりやっていたような印象がありますが、
太平洋戦争時の上層部で実戦経験のある人間は、山本五十六始め数名しかいず、国の進路、戦闘の作戦もエリートの机上の立案だったと言います。

米英ではもっとも優秀な軍人が補給、輸送などの分野に行くのに反し、日本ではそれらは「武士」の仕事ではないということで軽んじられる伝統であったそうな。「大言壮語」、「精神主義」が巾を聞かせ、冷静な情報分析などは驚く程少なかったと言います。

今年60歳で亡くなられた軍事評論家江畑健介さんの、並外れた情報の分析が消失してしまったというのは戦争の実態認識という意味で日本の損失だとさえ言われるようです。

わたしは小学生のころ、ニューギニアに派遣された何十万人かの日本軍が、
食料は現地調達という作戦だったということ、南方だからバナナ、芋はじめ
いくらでも日本より遥かに広い国土にあるはずだとされていたのに、ジャングルの密林にはそんなものは何もなく、疫病と飢餓が待ち受けていたという事実を知って目眩がしたことを覚えています。
そんなあたりから、プラモデルの兵器を集め、戦争を夢想する戦闘物語マニアだったことから醒めていったのです。

もし何十年か、何百年後、此の国に再び「戦争」しか選択の余地がないという状況がやってきたとしても、太平洋戦争の教訓など何の役にも立たないでしよう。軍人軍属230万人、民間人80万人、合わせて310万人の命が失われた行為は、はるか彼方の物語になっていっているはずです。

絶望的なお話です。
しかしその物語が本当に日本の民族の心の底から沸き上がる様な「神話」に
なっていっていたとしたら・・・・。
そんな夢想にしか、捨て石となった若者達の浮かばれる術はないような気がします。

以前にも書きましたが、何度でも書きたいと思います。

司馬遼太郎さんの言葉、
「精神主義、原理主義は無能者の隠れ蓑」。

平和ではあるのでしょうが、重苦しい現代の世の中にもいくらでも転がっている病理だと感じます。


さて、テクノロジーは加速度的に進み、情報は津波のように押し寄せ、個人個人が「仕分け」ていかなくてはいけない(とされる)データはうんざりする程積もって行きます。
イラストレーターの吉井宏さんという方が、ご自身の仕事のデータ、MOディスク750枚分155GBをブルーレイディスク(写真手前、1枚25GBずつ)7枚に「移し替えた」様子を見聞きしましたので転載させていただきました。

何年かしたら、このブルーレイのお皿100枚分がちっちゃいガムひとかけら分くらいのチップになっているでしょう。
一人の人間には恐らくこの何十倍かの「データ」の様な物が積もり積もっていて、「死」というのはそれが一挙に消去されるというようなイメージでしょうか。
年間3万人を超える自殺がすでに10年以上続いていると言います。
あの大戦争の一割に当たる犠牲者が静かに積み重なっていっているわけです。

サークルゲーム。
今シーズンの紅葉も終わりでだいぶ葉も落ちてしまいました。
村人も高齢化して柚子の収穫も思うに任せず実を付けたまま朽ちて行く状態に。私の奮闘だけではどうにもなりませぬ。




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